皆さまこんにちは。トミー・クルバーグと申します。欧州ビジネス評議会、在日欧州商工会議所議長を務めております。
第三のEUIJの船出と、その卓越したプログラムの運営を担われる早稲田大学を、このように皆さまと共にお祝いできますことを光栄に思います。
この場は、EUの経験から学んだある事柄を皆さまと共有する良い機会であろうと考えました。それは、EUの中で最も成功した戦略プロジェクトのうちの一つ、単一市場の創設です。
また、ビジネスと消費者の双方を利する目的で、日・EU関係にその教訓を適用するためのいくつかのアイデアを提供したいと思います。それでは、単一市場計画をみていきましょう。
当初、EU加盟国は、もし彼らが加盟国間貿易に対する障壁を撤廃すれば、各国経済は利益を得ることになるだろうと予測しました。彼らは正しかったのです。
当初の単一市場計画が終了した1993年以降の10年間に、少なくとも250万人の雇用が、EU内部に新しく生み出されました。その10年間における富の増加は、およそ9000億ユーロ(117兆円)でした。
これはすべて域内市場によるものです。では一体どうやって?
・物の自由移動
単一市場の一つの支柱である「物の自由移動」から始めましょう。
これは、EU加盟国間の域内国境を越える物の移動にかかわるすべての物理的障壁を取り除くことを意味しました。つまり、すべての税関が除去されねばなりませんでした。
幸運にもそれが進み、多くの官僚機構も変えられました。こうして、政府、ビジネス、そして消費者にとって注目に値する結果がもたらされました。コストは下がりました。
そして、企業は新しい市場を海外に見出し、競争は激しくなりました。これは、消費者にとって、より良い製品へのアクセスの拡大を意味しました。
国家が独自のルールを持ち、各国の異なる要件を満たすために製品を変更する費用を際限なく負担した頃に比べ、たったひとつのルールが、27加盟諸国の、
日本の4倍の規模に相当する4億8000万人を越える人々からなる市場に適用される利点は明らかです。
・サービスの自由移動.
さて、「サービスの自由移動」に移りましょう。ヨーロッパのサービス産業は巨大で、多様で、複雑です。
そのため、共通のルールを創設し、国境を越える貿易のすべての障壁を可能な限り取り去るには、時間をかけねばなりませんでした。いずれにせよ、EUサービス指令が今年末までに法制化されることになっています。
そうなれば、EUのサービス企業は他の加盟国で開業する権利と、開業しなくても他の加盟国の領土内でサービスを提供する権利を有することになります。
金融サービス、通信、報道、専門的資格の承認といった分野では、これらの権利を保障する特別の立法が存在しています。このような立法から利益を得るのはサービス企業だけではないでしょう。
なぜなら、サービス提供者は一層競争力をつけるのですから、彼らのすべての顧客――ビジネス、政府、消費者――も、その恩恵をうけるはずです。
・資本の自由移動.
資本についても同じことがいえます。「資本の自由移動」は規制が容易な分野ではないにしろ、国境を越える貿易と労働者の自由移動の促進に関して、EU単一市場を適切に機能させるために不可欠です。
EU法制は、消費者にローン、保険、預金、年金のような金融商品について、より広い選択肢を持たせることを目指しています。
そういった商品は、欧州のどこででも買うことができ、すべての企業がより容易にそしてより安く資金を借りられるようになります。すべての者にとって、資本、財、サービスのコストは下げられるでしょう。
・人の自由移動
最後に、「人の自由移動」です。多くの企業が証明したように、人員を容易にある場所から別の場所に移動できることは、事業の成功にとって重要であり、場合によっては決定的に不可欠です。
幸運にも、2,3の一時的な例外はありますが、EU市民はいかなる加盟国の間も自由に移動することができ、福祉によって守られながら定住することができます。
そこで、学び、職を求めることができ、また専門性を発揮したり、ビジネスを立ち上げることもできます。そして、退職後の生活も送ることができます。
・EUは日本のモデルか?
EU単一市場が莫大な利益をもたらしたことがおわかりいただけたでしょうか。それは、市場をいっそう動的なものにし、競争を拡大し、企業をより競争的になるよう刺激してきました。
われわれは考えました。貿易の障壁を下げることが、EU加盟国にとって有用であるならば、日本にとってそうでないといえるのか、と。
日本では、それと匹敵する他の経済国とくらべ、海外からの直接投資のレベルが低く留まっています。いうまでもありませんが、海外からの直接投資は経済を豊かにします。
海外企業は新しい経営技術、マーケティング手法、ビジネス方法、さらには新鮮な研究開発と資本へのアクセスを提供します。海外直接投資の増大は、競争を高め、国内企業をいっそう革新的な方向へと刺激します。
しかし、これまでの日本政府の海外投資を促進する法制努力は、ほとんど成功していません。多くの国内企業は、海外企業による買収を恐れ続けており、自らの生き残りの手段として規制的障壁を主張してきたようにみえます。
われわれは、いまが変革の時であると確信しています。そして、EU加盟国に採用されたモデル、すなわち貿易の障壁を低くし、経済統合を進めることが、その回答の一部でありえます。
したがって、EUと日本は協働せねばなりません。時間をかけ、単一市場の観念をわれわれ自身の貿易関係へと拡大し、経済分野におけるより緊密な協力がもたらす利益を達成することに、照準をあわせましょう。
・経済統合協定――物、サービス、資本、人
われわれの経済規模を合わせると、地球規模のGDPの40%を占めることになります。それは、互いが巨大な潜在力を提供し合えることを意味します。
しかし、われわれの経済・貿易関係は、ルールと規制に関して、際限のない未解決の差異に苦しめられます。今は新しい、共有アプローチを創出するために協働する良い時です。それは何を意味するのでしょうか?
まず、EUと日本の間の財の移動の自由化を手始めに、製品基準と認証スキームの相互承認を達成すること、税関と輸出入税の共通アプローチを発展させることに焦点をしぼり、作業を進めることです。
成功は、EUと日本双方が、行政コストの削減から得られるものを意味するでしょう。すなわち、消費者は安全性に妥協することなく、新製品をより早く手に入れることができるでしょう。
それは、競争を高め、またそうすることで、国内産業の競争力が改善されるでしょう。EUと日本は、金融、保険、法、通信、建設セクターにおける共通の競争ルールと、サービス提供者のための共通基準を確立するためにも、
協働できるかもしれません。EUと日本の間の「資本の自由移動」のために協働しようという強い主張もあります。それは、税に関する課題に取り組むこと、また、配当金、ロイヤリティ、株式への二重課税をなくしたり、
課税を保留することを意味するのかもしれません。最後に、当然ではありますが、EU‐日本間の経済統合の拡大を達成するためのいかなる取り組みも、両者の間の人の移動をより容易にすることに依存するでしょう。
しかし、これをあきらめ、すべてを「解決不能」箱に捨ててしまう前に、われわれがなぜこの提案を検討中なのか、思い起こしてみましょう。
単一市場の観念は、繁栄と職の増大をもたらすことを証明しました。
EUと日本の複合的な経済力、競争力を高めようという共通見解とそこから得られる利益により、われわれは問題解決のために協働する理想的なパートナーなのです。
ですから、それが難しいからといって、この提案を捨ててしまうのはやめましょう。EU-日本間の貿易関係に単一市場の観念を拡大することはできるはずです。
そして、単一市場の拡大は、雇用、ビジネス、そして消費者に、必要な支援を提供することになるでしょう。
そのようなEU-日本経済統合協定は、現存の多国間貿易協定に基づく、そしてそれを補足するものであり、将来的には世界中の市場で利用されるルールと基準をつくる道を切り開けるかもしれません。
・今こそ変革の時
昨今の経済危機は、行動の時を知らせる警鐘です。われわれは、物事をより一層良くするための手段と機会をもっているのです。直ちに行動を起こしましょう!ご清聴ありがとうございました。
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