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【2009年度 EU調査奨学金】
研究報告書 - 渡邉 峰生 氏 (理工学術院・大学院先進理工学研究科)

20103月30

 

EUIJ早稲田 

EU調査奨学生 研究報告書


渡邉 峰生

早稲田大学理工学術院

大学院先進理工学研究科

                                   

1.      本調査の目的

 

欧州の学術研究機関におけるロボット研究の動向を調査するとともに、共同研究を行うため、平成213月に、オランダ、ドイツ、イタリアの大学を訪問した。今回の調査の具体的な項目は以下の通りである。

 

(1)    ロボット研究所の視察

トゥヴェンテ大学(オランダ)[1]、カールスルーエ大学(ドイツ)[2]

(2)    手術用ロボットについての共同研究

聖アンナ高等研究院(イタリア)[3]

 


2.      調査日程

 

期間: 201032日(火)~20日(土)


 3 2日(火)   成田国際空港出発

 スキポール国際空港到着

 3 3日(水)   トゥヴェンテ大学(オランダ)訪問

 34日(木)   カールスルーエ大学(ドイツ)訪問

 3 6日(土)   移動日

 38日(月)   聖アンナ高等研究院(イタリア)訪問、滞在開始

 319日(金)  聖アンナ高等研究院(イタリア)滞在終了

 ピサ空港出発、シャルル・ド・ゴール国際空港経由

 320日(土)  成田国際空港到着

 


3.      調査結果


(1) トゥヴェンテ大学(オランダ)

33日に、オランダのエンスヘデにあるトゥヴェンテ大学を訪問した。トゥヴェンテ大学と早稲田大学のロボット研究グループの間では、かねてから交流が行われている。20096月に早稲田大学のロボット研究グループの代表者数名がトゥヴェンテ大学訪問を行い、200911月にトゥヴェンテ大学の学生がスタディツアーで東京女子医大との連携施設であるTWIns[4]の見学を行っている。さらなる交流発展のために、研究内容を把握し、今後の連携の可能性を調査する意義がある。

まず、Biomechanical Engineering Laboratory[5]の見学を行った。この研究室では、歩行訓練ロボットLOPESを開発しており、様々な研究成果[6] [7]を挙げている。Asseldonk助教により、研究室で行われている研究について一通り説明を受けた後、LOPESによる歩行訓練を体験し、意見交換が行われた。私が博士研究で取り組んでいる研究は、対象が違うものの歩行訓練ロボットの開発において関連することが多くあるため、この意見交換は大変参考になるものであった。また、LOPESを用いた実験が可能であるという申し入れをいただいたので、共同研究の可能性を検討しつつ、今後の研究計画を考えていきたい。


Fig1 (c)Takao_Watanabe.jpg


Fig. 1 eXp Lab.   (c) Takao Watanabe

次に、Control Engineeringグループのリーダーであり、今回のトゥヴェンテ大学の訪問をアレンジしてくださったStramigioli教授と面会した。Stramigioli教授からは、研究動向やEUプロジェクトについての説明を受けた。その後、Control Engineering研究室を訪問し、下水道の破損を検査するためのロボットや、歩行ロボットのデモを見学した。また、新設された学部生向けのコースであるCreative technology学科[8]の説明があり、教育や表現のためにロボットを使う試みを紹介された。そして、スタジオや生活空間のような環境で様々な実験ができるSmart eXperience Lab[9]の施設(図)を見学した。最後に、Technical Medicine学科[10]の見学を行った。この学科では、医療ロボットの研究も行われていたが、一方で、日本でいう臨床検査技師のような資格が取得できるコースもあり、急速に高まる医療サイドのニーズに適合した人材を育成する学際的な試みがなされているようであった。


(2) カールスルーエ大学(ドイツ)

34日に、ドイツのカールスルーエ大学のDillmann教授の研究室であるHumanoids and Intelligence Systems Laboratories[11] を訪問した。2008年度、早稲田大学はカールスルーエ大学を含む3大学と、ロボット工学およびコンピューターサイエンス分野における研究および学生の国際的交流を目的とした協定(InterACTInternational Center for Advanced Communication Technologies[12])を結んでいる。これまでに、お互いに研究機関を訪問している。 20102月にカールスルーエ大学の研究者が来訪した際に、カールスルーエ大学におけるロボット研究の概要、共同研究の可能性についての説明を受けた。今回の訪問では、カールスルーエ大学におけるロボット研究の詳細を把握し、今後の連携の可能性を調査した。

ポスドクのStefanie博士に案内をしていただき、研究室の研究内容について紹介を受けた後、私の所属する藤江研究室の活動を紹介した。Humanoids and Intelligence Systems Laboratoriesでは、ヒューマノイドロボットや医療ロボティクスに関する研究等を行っている。まず、カールスルーエ大学が中心になって開発されたヒューマノイドロボットARMAR[13]のデモを見学した後、Stefanie博士らMedical system group[14]が研究している医療分野の画像処理技術の説明を受けた。画像処理技術が活用できるような共同研究であれば、検討したいという意見をいただいた。


(3) 聖アンナ高等研究院(イタリア)訪問

 38日にイタリアの聖アンナ高等研究院を訪問し、19日まで滞在した。聖アンナ高等研究院とは、文部科学省グローバルCOEプログラムの一つとして採択された早稲田大学「グローバルロボットアカデミア」[15]での海外協定校となっている。大学院教育が中心の大学であり、メインキャンパスはピサにあるが、ロボット研究が行われているのは、ピサから電車で15 分くらい離れたポンテデラという街にあるPolo Sant'Anna Valdera(PSV)という施設である。今回の訪問先は、そこのPaolo Dario 教授の研究室である、ARTS (Advanced Robotics Technology and Systems) Lab. [16] CRIM (Center for Applied Research in Micro and Nano Engineering) Lab. [17]であった。

ARTS-Labでは、ヒューマノイドやサービスロボットの研究を行っていた。最初に2003年から開始した日本とイタリアの政府間協定に基づいて発足した、早稲田大学との相互サテライトラボであるロボ・カーサ[18]を訪問し、早稲田大学高西研究室と共同で研究しているヒューマノイドロボットSabianの説明を受けた。また、ロボットハンド、都市衛生用ロボットシステム「ダスト・ボット」、上腕の外骨格ロボット等を見学した。Bio-inspiredというコンセプトで、生物・生体のメカニズムを観察し、ロボットの機構や制御システムへ応用する研究が行われていた。EUプロジェクトとして行われている研究が多く、私が訪問したトゥヴェンテ大学の研究室やスイスのEPFLと共同研究しているものもあった。

CRIM-Labでは、医療ロボットやマイクロロボットなど比較的新しい領域の研究を行っており、腸の中を移動するロボット、サラマンダーを模し水中を泳ぐロボット等の研究が行われていた。今回私が滞在したのはこのCRIM-Labであり、モジュール型手術用ロボット関連の研究を行った。内容は次章にて詳述する。

また、PSVの施設内にIITIstituto Italiano di Tecnologia[19]という研究機関が併設されていた。IITはイタリアにおける特殊科学研究を促進させるため、米国のMITを目指して建てられたイタリア技術機関である。ただ、この拠点は設立後まだ間もなかったため、これから始まる研究のコンセプトの説明を受けた。今後Micro-Bioroboticsを中心とした研究が行われていくとのことであった。


        Fig.2 (c)Takao_Watanabe2.JPG            Fig.3 (c)Takao_Watanabe.JPG


                     Fig. 2 Dustbot                      Fig. 3 Exoskeleton arm with novel control method

                 (c) Takao Watanabe                                       (c) Takao Watanabe


4.      共同研究


38日から19日の間、聖アンナ高等研究院の前述したCRIM-Lab.に滞在し、共同研究を行った。今回の共同研究は、早稲田大学「グローバルロボットアカデミア」が主催した200911月のサマースクール[20]において提案された。共同研究のテーマは、「モジュール型手術用ロボットの入力デバイスの操作性の評価」である。これまでにCRIM-Lab.らの研究グループでは、Assembling reconfigurable endoluminal surgical systems (ARES)という、体内で構成可能なモジュール型手術用ロボットを開発してきた[21]。しかし、このコンセプト自体が十分革新的で重要であったため、そのモジュールロボットに適した入力デバイスの研究までは行われていなかった。一方、私が所属する早稲田大学の藤江研究室では、マスタースレーブ形式の手術支援ロボットシステムの3Dシミュレータの開発ならびに評価手法の構築を行ってきた[22]。そこで本共同研究では、ARESの入力デバイスと連携した3Dシミュレータを開発し、モジュールの構成ごとのタスク達成までの所要時間や使用感を比較し、操作性を評価した。

開発したシミュレータと評価手法を用い、5人の被験者の協力を得て、モジュール型手術用ロボットの入力デバイスの操作性の評価に関する実験を行った。本共同研究の成果は、論文にまとめ今後学会で発表する予定である。

なおこの共同研究は、イタリア側から聖アンナ高等研究院に所属するポスドクの原田研究員、日本側から早稲田大学の川村助手の協力により遂行された。


5.      まとめ


オランダのトゥヴェンテ大学ならびにドイツのカールスルーエ大学のロボット研究所の視察を行い、また、イタリアの聖アンナ高等研究院にて手術用ロボットについての共同研究を行った。

視察においては、各研究機関のロボット研究の内容を理解することができたことはもちろん、複数の国の研究機関を訪問できたことから、国ごとの研究動向の違いや、EUプロジェクト等研究レベルでの国際連携の現状を知ることができた。日本でも、研究プロジェクトの公募等で、複数の研究室で共同申請を行うものがあるが、研究分野が近い研究室が集められていたり、採択後は研究室ごとに独自の研究が進められていたりする点が、異分野の研究室と組み、協力して一つのシステムを作りあげているEUプロジェクトとの違いだと感じた。

  共同研究においては、実質9日の短い滞在日数であったが、実験環境を構築し、被験者による実験の遂行まで行うことができた。この研究成果は、今後学会にて発表される予定である。また滞在を通して、短期間の視察では難しい研究室の哲学や文化の理解、人的ネットワークの構築ができたことは大きな収穫であった。


6.      謝辞


 今回の調査は、EUIJ早稲田、早稲田大学GCOE「グローバルロボットアカデミア」、早稲田大学藤江研究室、各受け入れ機関の支援により遂行された。



7.      参考


[1] University of Twente

http://www.universiteittwente.nl/

[2] Universität Karlsruhe (TH)

http://www.uni-karlsruhe.de/

[3] Scuola Superiore Sant'Anna

http://www.sssup.it/ 

[4] Tokyo Women's Medical University - Waseda University Joint Institution for Advanced Biomedical Sciences

      http://www.twmu.ac.jp/ABMES/en/twins/

[5] Biomechanical Engineering Laboratory at Twente University

      http://www.bw.ctw.utwente.nl/research/projects/lopes.doc/index.html

[6] Vallery H, Van Asseldonk EHF, Buss M, and Van der Kooij H. Reference Trajectory Generation for Rehabilitation Robots: Complementary Limb Motion Estimation. IEEE Trans Neural Syst Rehabil Eng 17: 23-30, 2009

[7] van Asseldonk EH, Wessels M, Stienen AH, van der Helm FC, and van der Kooij H. Influence of haptic guidance in learning a novel visuomotor task. Journal of physiology, Paris 103: 276-285, 2009

[8] Creative Technology

 http://www.bachelor.utwente.nl/create/

[9] Smart eXperience Lab

      http://smartxp.ewi.utwente.nl/pub/NIRICTcongresposter_SEL.pdf

[10] Institute of Technical Medicine

       http://www.tnw.utwente.nl/itm/

[11] Humanoids and Intelligence Systems Laboratories

       http://wwwiaim.ira.uka.de/

[12] Inter-ACT

  http://isl.ira.uka.de/

[13] Research on humanoid robot "ARMAR"

       http://wwwiaim.ira.uka.de/dilepis2/index_id-360_nav-53.html

[14] Medical research at the IAIM

       http://wwwiaim.ira.uka.de/dilepis2/index_id-365.html

[15] Global Robot Academia

       http://www.rt-gcoe.waseda.ac.jp/

[16] ARTS Lab

       http://www-arts.sssup.it/

[17] CRIM Lab

       http://www-crim.sssup.it/

[18] ROBOCASA

  http://www.robocasa.net/

[19] IIT@SSSA

       http://www.iit.it/en/resources/openings/iit-centres/iitsssa.html

[20] WSK-TNg2009 Summer School in Autumn

http://www.rt-gcoe.waseda.ac.jp/research/seminar/host_wsk-tng2009_summer_school_in_autumnfrom_communication_to_collaboration.html

[21] Oetomo, D.; Daney, D.; Harada, K.; Merlet, J.-P.; Menciassi, A.; Dario, P.; , "Topology design of surgical reconfigurable robots by interval analysis," Robotics and Automation, 2009. ICRA '09. IEEE International Conference on, vol., no., pp.3085-3090, 12-17 May 2009

[22] Kawamura, K.; Kobayashi, Y.; Fujie, M.G.; , "Operability evaluation using an simulation system for gripping motion in robotic tele-surgery," Engineering in Medicine and Biology Society, 2009. EMBC 2009. Annual International Conference of the IEEE , vol., no., pp.5106-5109, 3-6 Sept. 2009