9. 11テロ攻撃は、米国の外交政策に急激な変化をもたらしたと同時に、米欧関係を変容させた。現在の米国は、今日まで、欧州諸国が経験し、見知っていた米国とは大きく変わってきている。この米国と欧州諸国の間の差異は、深く且つ構造的であり、不可逆のものとなってきているし、9. 11以来、安全保障の脅威に対する問題意識が米欧間では大きく異なってきている。欧州諸国は、こうした米国自身の急激な変化の大きさを完全に把握しきれていないのである。今日、大西洋を跨ぐこの米欧関係の現状と将来に関して、喧しい議論が大西洋の両岸のみならず、アジアなどでも頻繁に行われている。嘗ては、共通の守るべき価値観及び世界観を有し、堅固で磐石な関係と信じられていた大西洋間の米欧関係、いわゆる「西側」の同盟関係が、深刻な状況に陥っている。特に、2002-3年に掛けて、イラク危機及び戦争を巡って、米欧関係は動揺し、軋んだ。EU内の結束も大きく揺るがされた。今、正に、米欧関係は、第2次大戦以来の最大の試練に直面しているのかも知れない。
本講義では、まず、米欧を繋ぐNATOに焦点を当て、NATO創設の歴史、冷戦構造崩壊以後のNATOの存在意義、冷戦後のEUの共通外交安保政策(CFSP)、共通安保防衛政策(ESDP)の発展、EUとNATOの関係、EUとNATOの拡大といった重要テーマを取り上げ、21世紀の米欧関係のあり方を考察していく。また、イラク戦争前と後の米欧関係にも言及していく。




