| 講師 | 北川達夫客員教授 (日本教育大学院大学) |
|---|---|
| 司会 | 村田信之 EUIJ早稲田・永田町アウトリーチ担当 (早稲田大学非常勤講師) |
| 日付 | 2009年7月16日(木) |
| 時間 | 18時から19時 |
| 場所 | 衆議院第1議員会館、第4会議室 |
| 言語 | 日本語 |
| 備考 |
1. 開会の挨拶等
中山勝博EUIJ早稲田事務局長によるEUIJ早稲田の紹介、並びに村田信之氏による北川達夫教授の経歴紹介の後、表題テーマのプレゼンテーションが始まった。
2. プレゼンテーション
① 国際機関による「新しい学力」の提案
グローバル化が進む中で、EU、OECDなどの国際機関は、「新しい学力」とそれに基づく教育の指針を示すようになった。例えばOECDは、急速な変化とその予測不可能性を特徴とした現代社会における学力を、知識を有効に活用する能力(リテラシー)だといった。そのような学力観は、習得した知識の量を学力として評価する従来の学力観からの革命的な変化を意味した。
② フィンランドの先行
OECDの学力観に基づく学力測定テスト、PISA (Programme for International Student Assessment)において、フィンランドの生徒が好成績を収めた。それを、フィンランドが推し進めてきた教育改革の成果とみることができる。フィンランドは、OECDの提案に先立って、現場レベルでは1980年代に、中央政府の政策としては1990年代に、「新しい学力」に対応しうる教育を実施し始めた。
③ フィンランドの教育観
フィンランド政府は、教育予算の拡大のために、「社会問題は教育によって改善しうる」という学者の主張を、国民に対する説得材料として用いてきた。フィンランドの教育政策の基本目標は、人材の育成――木材と並ぶ――である。迅速な教育改革の背景には、「重要な案件は超党派で相談して決定する」というフィンランドの伝統的な発想がある。その一例として、国会議員が党利党略を留保し超党派で国の未来を考えるために国会に常設委員会として設置された、「未来委員会」が挙げられる。
④ 「新しい学力」に対応する教育とは
フィンランドの教育目標は、多様性の中で多様性を生かした集合的な「問題解決力」を子どもにつけることである。そのような力は、諸個人の意見は異なるという前提で、それぞれの意見の正当性、あるいは理由を理解し、妥協を伴う合意形成を指向する「対話型コミュニケーション」の訓練によってはぐくまれる。しかし、そのような教育を実施していないはずの諸国家の生徒――アジアの新興諸国――も、PISAの学力測定で好成績を収めており、フィンランド型の教育だけが、「新しい学力」に対応する教育だとはいえない。
3.質疑応答等
本当に「問題解決力」だけで十分か、という質問があった。これに対し北川教授は、「十分だ」と主張しているのはフィンランド政府であって、そうでないという学者や現場の主張もあるといい、見掛け上「おちこぼれ」を出さないために、学力観を変える、あるいは到達目標を変えるということは世界的に見てもよくあることだといった。しかし、フィンランドのいう「問題解決力」は、今ビジネスの現場で求められている力と確かに共通している、とも述べた。その後、村田氏が質疑応答を閉じ、発題者の北川教授と参加者に謝辞を述べ、本勉強会は終了した。




