| 講師 | 中村民雄教授(東京大学社会科学研究所) |
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| 司会 | 杉本芳輝主任教授(人事院公務員研修所主任) |
| 日付 | 2009年9月25日(金) |
| 時間 | 18時から21時 |
| 場所 | 人事院 大会議室 |
| 言語 | 日本語 |
| 備考 |
1. 開会の挨拶等
司会の杉本芳輝氏による中村民雄教授の経歴紹介の後、表題テーマの講義が始まった。中村教授は、超国家組織としてのEUの史的発展を、その構成国の国家主権の部分的委譲と究極の維持の対抗過程として次のように説明した。
2. 講義概要
① ECの誕生(1950年代から1980年代)
EC条約(1957年)は、EC加盟国の主権行使をEC法が適用される範囲で制限する条約だった。この条約を受け加盟国は、ECの政策や立法の決定過程に、自国の利害や主張を実効的に注入する工夫をした。その工夫は、欧州議会の関与を意見表明に留めること、閣僚理事会の表決を全会一致とすることとして顕著に現れた。これに対し、一方でEC裁判所は、法解釈権をもって積極司法を行い、他方で立法、政策提案を独占するEC委員会は、新しく拡大する政策分野にその権限を行使することで、ECを発展させた。
② ECからEUへ(1990年代)
1980年代までのヨーロッパ統合は、NATO、CE、EECという3つの枠組みが並列するような体制で推し進められてきた。しかし、冷戦の解消は、ヨーロッパ統合の目的を再設定する必要性を高めた。1992年つくられたEU条約は、EUを超国家組織としてのECと別個の2つの政府間協力制度(共通外交・安全保障政策[CFSP]と警察・刑事司法協力[PJCC])の3本の柱から構成される組織にした。ECには、通貨同盟、教育、文化、公衆衛生、消費者保護について新しい権原が追加された。ECが権限をもつ範囲の政策や立法は、欧州議会と閣僚理事会が共同で決定することになり、多数決事項が増大した。これに対し、CFSPとPJCCにおいては、国家主権を保持できるよう工夫された。すなわち構成国も立法・政策提案ができるようになり、決定を独占する閣僚理事会では構成国が拒否権を行使できる全会一致が原則とされた。構成国の国民の不満は、ECに向けられた。ECの立法・政策過程が、国内の過程に比べ官僚的で非民主的にみえたからである。
③ リスボン条約へ
EUは立憲主義的になりつつある。EC条約、EU条約、EU基本権憲章(2000年)を一本化しようとした憲法条約は失敗したが、これらを「同一の価値をもつ」と定義するリスボン条約(新EU条約)は発効が間近である。新EU条約は、EUの目的を「平和、連合の価値及び連合の人々の幸福」の推進と宣言し、国家が追及する総合的な目的により近づけた。統治の諸原則として、連合の価値として基本的人権、法の支配、多元主義などが掲げられた。EUの民主的運営原則として、EU立法は欧州議会と閣僚理事会の共同決定とすることや、各国議会の監視と立法過程の議事録の公開などが約束された。また、新EU条約によりEUの3つの柱はEUへと一本化されることになった。だが、新EU条約にも外交安保防衛分野のみ「特別の準則と手続」が定められ、外交安保防衛分野とそれ以外の分野という事実上の区別は残りそうである。
3.質疑応答等
コーヒーブレイクの後、質疑応答が始まった。ヨーロッパ統合の条件は何だったのかという質問に対し、中村教授は、その始まりに先験的な条件はなく歴史的な偶然だったと回答した。第二次世界大戦直後の二度と戦争はしまいという雰囲気の中で、石炭・鉄鋼の共同管理というよいアイデアが生まれ、ヨーロッパ統合運動としてのハーグ会議が開催されるなどして、欧州各国が飛びつくような統合への機運が高まったからだと回答した。またEU統合が深化した現代においては、ヨーロッパの統合はもはや運命になり、実は国家主権はうつろになりつつあると述べた。次に、世界の人びとはEUをどのように評価しているといえるか、また中村教授はEUをどう評価し、東アジア共同体の構想をどうみるか、という質問に対しては、地域的な共通課題への取り組みは、アフリカ、南米、アジア等にもみられる現象であり、ヨーロッパ統合の創意工夫は世界的に注目されているはずだと回答した。中村教授は、現代の諸問題は近隣諸国と協力して解決すべきと考えており、ヨーロッパ統合の法技術のうち利用できるものは応用して、東アジアの協力制度も考案するべきだと述べた。中でも日本政府が積極的に取り組もうとしている環境問題の解決は、地域的取り組みが鍵を握るとも述べた。そこで質疑応答は閉じられ、最後に杉本氏が中村教授と参加者に謝辞を述べて、本イベントは終了した。




