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国会図書館立法スタッフの勉強会: ギリシャ財政危機について

講師 田辺正実 氏(駐日欧州連合代表部)
福田耕治 教授(EUIJ早稲田代表、早稲田大学政治経済学術院)
司会 福田耕治 教授(EUIJ早稲田代表、早稲田大学政治経済学術院)
日付 2010年7月7日(水)
時間 18時30分から20時
場所 国立国会図書館
言語 日本語
備考 10名(国会図書館立法スタッフ)

講義1:「ギリシャの財政危機と経済状況」、田辺正実氏
田辺氏は、ギリシャ財政、経済の「危機」をマクロ的側面から解説し、欧州理事会、EU理事会、欧州中央銀行(ECB)および国際通貨基金(IMF)の対応・対策について講義した。ギリシャの深刻な財政赤字は、2009年10月の総選挙で政権交代が起こり、新政権が前政権の財政報告を大幅に下方修正したことで明らかになった。それ以前から欧州理事会は、ギリシャが過度の財政赤字にあると断定し、是正するよう勧告していた(2009年4月)。ギリシャは2010年1月に「安定・成長計画」を理事会に提出し、財政赤字のGDP比を2009年の12.7%から2010年には8.7%に引き下げるという目標を示した。これに応じるかたちで、政府への金融支援が禁じられているECBに代わり、ユーロ・グループ(ユーロ圏各国の財務相による会合)とIMFがギリシャへの1,100億ユーロの協調融資に合意した。また、EU理事会は緊急融資の仕組みとして、ユーロ圏を対象にした総額7,500億ユーロの欧州金融安定化メカニズムの創設を決定した(共に2010年5月)。

講義2:「ギリシャ財政危機とユーロの行方」、福田耕治教授
福田教授は、欧州の経済統合およびユーロ(通貨同盟)との関連で、今回の「危機」についての政治学的見解を示した。ギリシャによる財政報告の粉飾は、2001年のユーロ圏への参加と関係があった。それは、ユーロ参加の条件である単年度財政赤字GDP比3%以内、政府債務残高GDP比60%以内という財政規律を守っているように見せかけるためだった。「安定・成長協定」として1997年に定められたこの財政規律は、相互に強い関連性を持つ金融政策と経済・財政政策におけるEU内の(EUと加盟国のもつ)権限の不一致を補うことを目的にしているが、有効に機能していないところがある。例えば、世界的に悪化する現在の経済状況に応じて、この財政規律は一時的に緩められている。この危機を契機にEUによる金融・財政の一体化が進むようには見えない。EUが打ち出した諸種のギリシャ支援についても、支援を受ける国のモラルハザードに関する懸念が加盟国、特にドイツから強く示されている。

質疑応答
参加者からの質問は、ギリシャ財政がこの危機的状況から回復する見込みは実際にあるのか、すなわち、欧州理事会らとの約束を実行できないのではないか、という趣旨の質問に集中した。また、ドラスティックな緊縮財政に国民の理解は得られるのか、という質問もあった。これに対し田辺氏、福田教授は、IMFとECBの合同チームがギリシャの回復は「可能ではないか」と示した見解(プレス・リリース)を参照しつつも、阻害要因が多いと指摘した。まず財政再建により、失業率が上がり経済がより悪化する可能性がある。また、国民の理解も得られていない。ある調査で国民の6割が緊縮財政に反対していることが明らかになった。93%の所得代替率を占める年金制度や全労働力人口の2割をも占める公務員数など、ギリシャ国民は独特の社会構造を保とうとしているのではないか、と論じられた。と同時に、ギリシャの経済危機からの回復には、政権の強力な政治的リーダーシップが必要ではないか、という展望も示された。

文責: EUIJ早稲田 加藤恵美