| 講演者とパネリスト | 亀井静香国務大臣 (衆議院議員、国民新党代表) オーベ・ブリング名誉教授 (スウェーデン国立防衛大学、ストックホルム大学) チョ・グック教授 (ソウル大学、韓国国家人権委員会委員) 保坂展人氏 (死刑廃止を推進する議員連盟顧問) 田鎖麻衣子氏 (NPO監獄人権センター事務局長) 戸波江二教授 (早稲田大学法学学術院) 高橋則夫教授 (早稲田大学法学学術院) |
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| 司会 | 尾崎元氏 (共同通信前橋支局長) |
| 日付 | 2009年12月2日(水) |
| 時間 | 16時30分から19時 |
| 場所 | 早稲田大学11号館501教室 |
| 言語 | 日本語及び英語 (同時通訳) |
| 備考 | 第4回永田町勉強会 |
1. 開会の挨拶等
司会の尾崎氏による講演者の紹介の後、田山輝明早稲田大学副学長とステファン・ノーレン、スウェーデン大使が開会の辞を述べた。田山教授、ノーレン大使ともに、亀井静香国務大臣ら講演者に謝辞を述べ、また、このシンポジウムが日本の死刑制度議論の発展に貢献するものになるだろうとの期待を述べた。その後、基調講演、パネリスト講演が続いた。
2. 講義概要
【基調講演1:亀井静香衆議院議員】
日本は死刑制度廃止の後進国である。人の生命、尊厳は守られねばならない。ある命を犠牲にして社会の安定を守る、そのような考え方は、市場主義的な構造改革と相通じるところがある。そうしてつくられた社会は健全でなく、日本の伝統に反する。日本の精神文化である「思いやり」がいきわたれば、死刑は廃止されるはずだ。「思いやり」は「友愛」の原点である。「友愛」の実現を目指す鳩山政権で、日本の死刑制度は新しい局面を迎えている。100人から成る死刑廃止議連の会長として、死刑の廃止に向けて積極的に取り組んでいきたい。そのような永田町の活動を力強く支える、このようなイベントが開催されることを喜ばしく思う。
【基調講演2:オーベ・ブリング教授】
欧州では18世紀の啓蒙の時代に、死刑に関する議論が知識人の間で高まった。19世紀末には、ポルトガル、オランダ、イタリア、北欧諸国などで平時の死刑が廃止され始めた。その潮流は第二次世界大戦でいったん途切れた。だが戦後に、まずドイツ、フランスで廃止され、英国では誤審が原因で1965年に廃止された。死刑の廃止は、知識人と政治家の活発な議論の結果として起こる。国民の世論ではない。政治家の責任は、世論を新しい価値に導くことである。国連自由権規約の第二選択議定書(1989年)で死刑の廃止が宣明され、2008年現在、139カ国、世界のおよそ3分の2の国で死刑が廃止・停止されている。日本でも、死刑廃止に向けた政治家のリーダーシップが必要だ。
【基調講演3:チョ・グック教授】
アジアには、死刑を存続している国が複数認められる。韓国では独裁政権の時代を経て、1997年の23人に対する死刑執行を最後に、非公式モラトリアム(執行停止)が10年以上続いている。死刑は合憲との判断が1998年に出ている。だが、2009年の最新の申し立てについて、裁判所が国会に対し死刑を廃止せよと求める可能性が高まっている。これまで国会に死刑廃止に関する5つの法案が出されてきた。2005年には国家人権委員会が、死刑を戦時に限定すべきとの見解を出している。死刑廃止に向けた一連の動きの背景には、1990年代以降の市民・宗教団体の努力がある。この韓国の例は日本の参考になりうる。
【パネリスト講演1:保坂展人氏】
死刑廃止議連は、欧州評議会議員団会議の訪日団と開催したシンポジウム(2003年)の成果を踏まえ、モラトリアムや終身刑の導入等を盛りこんだ法案を提出しようとした。その後死刑の執行が連続した。2003年からの3年間で4件が、2006年から2008年の3年間で35件の死刑が執行された。2009年9月の政権交代を受け、千葉法相に死刑の執行の停止と法務省、内閣での議論を要請したところだ。また、終身刑の他、裁判員裁判における死刑評決の全会一致制度の導入の法案を作成中である。EUは、死刑廃止に至る経験をもっとわかりやすく日本国民に伝えてほしい。
【パネリスト講演2:田鎖麻衣子氏】
死刑制度の存続を支持する世論は、「凶悪犯罪が増えている」、「死刑にはそれを抑止する力がある」、「死刑の廃止は凶悪犯罪の増加につながる」といった思い込みに基づいている。これはマスコミ、そして政府の情報操作の結果である。実際には、凶悪犯罪は減少し、その傾向は死刑の執行の有無とは関係がない。死刑制度の透明化、すなわち情報公開が必要である。世論を変える条件を作り出さねばならない。
【パネリスト講演3:戸波江二教授】
日本では、憲法第13条、31条、36条の条文からみて、死刑が違憲であるとはいえない解釈しにくい状況にある。これまでの最高裁の判決も死刑を合憲としている。しかし、日本国憲法が依拠する人権の基本原理には反しているというべきである。日本では、死刑を支持する国民が多数を占め、近年では80%程度に上昇しているといわれる。しかし、人権は多数者の意思によっても、侵されてはならないものである。
【パネリスト講演4:高橋則夫教授】
死刑存置論と死刑廃止論は水かけ論的様相を呈している。死刑存置論を支える「被害者の応報感情」に、刑事司法システムは対応できない。被害者と加害者が、訓練された仲介者に支えられ、感情をぶつけあい社会に再統合される必要がある。そのためには、刑事司法システムを補完するような公共的な仕組み、すなわち「修復的司法システム」が必要である。
3. パネルディスカッションおよび質疑応答他
一連の講演の後、基調講演者もパネリストとして加わり、ディスカッションが始まった。まず尾崎氏が、日本の政治家のリーダーシップのあり方について、パネリストに尋ねた。ブリング教授は、死刑の廃止は国際社会における日本の付加価値だと、政治家は国民に説明すべきだと述べた。また、死刑を容認する「アジア的価値」は、国際的価値に反するとも述べた。これに対しチョ教授は、「アジア的価値」の根本は人権と矛盾しないはずだと述べた。実際に韓国は死刑を事実上廃止していると付け加えた。田鎖氏は、死刑について十分な情報を知らされれば、国民は人権が守られる社会、すなわち死刑廃止を選択するだろうと述べた。
会場から、政治家のリーダーシップに関連して、なぜ死刑廃止議連のメンバーでありながら千葉法相は死刑制度について何も語らないのか、と質問があった。これに対し保坂氏は、国民的議論の高まりが政治家にそれを語らせるはずだと回答した。裁判員制度の導入は、すべての国民が特定の個人の死刑に関与しうるという状況を作り出すことになるので、国民が死刑制度に関心を持ち議論する重要な契機になると述べた。
その他、財政的にみて死刑は終身刑などに比べ効果・効率的ではないか、死刑を廃止するより誤審・誤判を防ぐ工夫をすべきではないか、ある個人の生命への権利を奪った者の権利をなぜ守る必要があるのか、といった質問がだされた。これらの質問に対し、複数のパネリストが、死刑廃止を擁護する立場から回答した。その後、予定を30分程度超過し、尾崎氏は質疑応答セッションを閉じた。最後に、福田耕治EUIJ早稲田代表から閉会の挨拶として、講演者と参加者に対し謝辞が述べられた。




