| 講師 | ユベール・ヴェドリーヌ氏 (元フランス共和国外務大臣) |
|---|---|
| 司会 | 片岡貞治 准教授 (EUIJ早稲田運営委員、早稲田大学国際教養学術院) |
| 日付 | 2009年5月15日(金) |
| 時間 | 13時から18時 |
| 場所 | 早稲田大学 小野講堂 |
| 言語 | フランス語(仏-日本語同時通訳) |
| 備考 | EU‐日本フレンドシップ・ウィーク・シンポジウムの第一部(13時から14時半)に開催 主催:早稲田大学現代政治経済研究所、EUIJ早稲田 後援:駐日欧州委員会代表部、駐日フランス大使館 |
さる5月15日に、本学小野講堂において、2009年日・EUフレンドシップウィーク・シンポジウムの枠組みにおいて、お招きしたヴェドリーヌ仏元外相による基調講演が行われ、概要は以下のとおりである。
1.代表者挨拶等
冒頭、モデレーターの片岡教授から、本イベントのスケジュールが示された。続いて、福田耕治EUIJ代表(政治経済学術院教授)が「このシンポジウムのメインテーマは、地球規模の喫緊の課題に協力して取り組むアクターとしての日本とEUとの連携の可能性の模索であり、このような場でヴェドリーヌ元外相が表題について講演することについて格別の期待を抱く」旨開会の辞を述べた。次に、駐日欧州委員会代表部リチャードソン大使が、ヴェドリーヌの講演に対する謝辞を示しつつ、「地理的に限定されない柔軟なEUの構築を検討している中で、ヴェドリーヌ元外相の実務的且つ理性的な観点に基づく「国際アクターとしてのEU」論を拝聴することは極めて有意義である」旨の挨拶を行った。
2.ヴェドリーヌ基調講演
ヴェドリーヌは主に3点にフォーカスして、講演を行った。第一のポイントは、「EUは国際アクターである」とのコンセンサスは欧州には存在しないということ、第二点は「EUが国際アクターになる意義」、第三点は、「今日という時代状況がEUを国際アクターにしつつあること」であった。
(1)「EUは国際アクターか否か?」
最初のポイントについて、ヴェドリーヌによれば、「EUの前身であるECSCの時代は世界アクターなどという観念や野心すらもなかった」と説明した。即ち、「欧州各国が協力し始めたのは、冷戦構造の中でソ連の脅威からわが身を守るためだった。今でも『国際アクターとしてのEU』は、特定の政策領域でしかその姿を現さない。例えば、貿易交渉等の経済政策領域においては、EUの『ひとつの声』は発展し、機能しているが、防衛・外交政策の面では、必ずしもそうなってはいない。また、EUがどこまで主権的になるか、すなわち各国がどこまで主権を手放すかという点についても、EU市民の中に多種多様な見解があり、必ずしもコンセンサスはないのである。」と述べた。更に、「自分は、現在のEUが超国家的なアクターとして国際的な1つのアクターとなっているとは考えていない。ドロールが言っていた様にEUは『国家主権の連合』であり、主権国家が残ることを忘れてはならならず、『アメリカ合衆国』に相当するような『欧州合衆国』はまだ存在していない」旨主張した。
(2)「EUが国際アクターになる意義」

第二点について、ヴェドリーヌ氏は次のように2つの意義を述べた。 第1の意義は、EU市民の利益を守ることである。一般世論は、自分たちのアイデンティティの多様性を守ってほしいと願っている。しかし、EUがEUの一般市民のアイデンティティを破壊しようとしているのではなく、利益を守ろうとしているのであるということが余り認知されていない。欧州議会、欧州委員会、EU理事会は、世論にもっと耳を傾け、現実的な視点に基づき加盟国間の意見を取りまとめ、法律を作り、条約などを積み重ねていかなければならない。他方で、第2の意義は、EUが、戦争という悲劇を繰り返してきた国際社会の秩序を守るための実用モデルとしての意義があるということである。」旨語った。
(3)「今日という時代状況がEUを国際アクターにしつつあること」
第三点について、ヴェドリーヌ氏は次のような見解を述べた。「現在の国際秩序は、米国の覇権的な、あるいは一極の世界(a single pole)から多極(a multiple pole)の世界へと質的に変化している。ここでいう『多極』とは、米国の他、ロシア、中国、日本、インド、欧州によって構成される。こうした状況下で、ブッシュ政権からオバマ政権への移行は、その政治状況を極めて象徴的に表している。米欧関係がこのように変容しつつあるということは、EUが国際アクターになりつつあるということでもあり、また、今こそEUが意義ある国際アクターにならなければならないのである。したがって、オバマ政権の誕生は、EUにとってのチャンスでもある。他方で、国際的な問題に対して、EU内部も必ずしも一枚岩ではないが、必ずやEUは内部の意見の相違などを調整し且つ克服し、前進していくことが出来ると自分は信じている。この課題は、日本にも共有される側面をもっており、国際社会のグローバルな問題に対して、日本とEUは積極的な意見交換を行い、共同で行動することが出来るはずである。」旨述べて講演を終えた。
(4)質疑応答

ヴェドリーヌ氏は、「ソフト・パワーによって構築される世界秩序にあっては、EUは既に国際アクターであるといえるのではないか」と質問に対し、「世界秩序はソフト・パワーだけで構築されるとは思っていない。」と返答した。次に、「EUはどこまで拡大するのか、EUは周辺国とどのような関係を結ぶのか」と質問された。これに対し、「恐らくEUは残りの北欧諸国(アイスランド、ノルウェー)、旧ユーゴスラヴィア諸国にまで拡大するであろう。一方でトルコの問題は50年にわたるEU統合プロセスに唯一残された極めて困難な問題である。他方で、ロシアとの関係については、信頼に基づくパートナーシップを築くのに、それほど時間はかからない」旨述べた。最後に片岡教授から、ヴェドリーヌ氏とリチャードソン大使に対し謝辞が述べられ、本イベントは締めくくられた。




