• EUIJ早稲田とは
  • 早稲田でEUを学ぶ
  • 講演会・シンポジウム
  • EUとの共同研究プロジェクト
  • EU情報・リンク

栗山 淳 外務省欧州局政策課課長補佐 講演会
「日・EU関係の現状~第19回日・EU定期首脳協議を終えて~」

講師 栗山 淳 氏 (外務省欧州局政策課課長補佐)
司会 中村英俊 准教授(EUIJ早稲田副代表、早稲田大学政治経済学術院)
日付 2010年7月9日(金)
時間 13時00分から14時30分
場所 早稲田大学 早稲田キャンパス10号館109教室
言語 日本語
備考 360名

2010年7月9日、外務省欧州局政策課課長補佐、栗山淳氏による講演会『「日・EU関係の現状」~第19回日・EU定期首脳協議を終えて~』が行われた。栗山氏は日EU間の外交の最前線でご活躍されており、現場での経験と豊富な知識に基づいて(1)EUの現状(2)日EU関係の歴史(3)日EU関係の将来について、刺激的な議論を展開した。

EUの現状
100709mrKuriyama.JPG
EUの歴史は、深化と拡大の歴史である。EUは1973年(当時はEC)以降6度にわたる加盟国拡大を繰り返してきた一方で、度重なる基本条約改正を行ってきた。今後も、4加盟候補国、特にトルコとの交渉過程を注意深く見ていく必要がある。「EUはどこまで拡大するのか」という問題は、EUの本質に関わる問題でもあるといえるだろう。
近年、EUの仕組みを特に劇的に変化させたのがリスボン条約である。まず、欧州理事会議長 (the President of the European Council) の任期が半年から2年半に延長されたことがその1つとして挙げられる。メディアではしばしばEU「大統領」と訳されるが、条約上の権限を吟味すると「常任議長」という訳がより正確だと言える。欧州委員会についてはPresidentを委員長とするなど訳語の問題はやや錯綜としているが、いずれにせよ新役職の果たす役割は、かなりの部分、選出されたファン=ロンパイ氏の手腕にかかっている。
外相レベルでも、ニース条約からリスボン条約への移行に伴い大きな変更が行われた。以前のトロイカ体制が廃され、新たに「外務・安全保障政策担当上級代表」へ代表権が一元化されたのである。欧州委員会副委員長も兼ねるこの役職には、キャサリン・アシュトン氏が選出され、EUの対外政策の調整・牽引役として期待されている。

日EU関係
では、日本が今後EUとの協力関係を深めていく必要性は、どこにあるのだろうか。大きく分けると、以下の3つが挙げられる。まず、EUは国際舞台において強力な発言力を持っている。それはアジェンダ・セッティング、ルール基準策定、国際世論形成といった部分で特に顕著である。したがって、EUの声を無視することはもはや困難である。第二に、EUはグローバル・アーキテクチャーにおいて大きな地位を占めている。P5(国連安保理常任理事国)のうちの2カ国、そしてG8のうち4カ国はEU加盟国であることが、それを端的に物語っている。第三に、グローバル経済において大国が果たすべき責任を考慮すれば、日EUの連携は必要不可欠である。世界全体のGDP、貿易量などにおいて両者が占めている割合を見れば、このことは明白であろう。
100709mrKuriyama_venue.JPG

日EU対話の基本的枠組みは、1991年の日・EC共同宣言(於:ハーグ)で作られ、以来ほぼ毎年首脳会合が持たれてきた。そして2001年の日・EU行動計画(於:ブリュッセル)で、より具体的な協力目標が定められたのである。今年の第19回会合では、2010年を新たな出発を迎える年(year of renewal)と位置付け、具体的で行動志向な日EU関係を築いていくことで意見が一致した。また、共同宣言から20周年を迎える来年の首脳会議に向けて、合同ハイレベル・グループ(joint high-level group)を設置し、関係強化のための共同検討作業を開始することも共同プレス声明の中で発表された。
日・EU行動計画に含まれる項目は非常に多岐に渡っており、一見するとこのような計画をわざわざ作成する意義は薄いように思われる。だが、日本にとっては確かにそうかもしれないが、EUからしてみればこれは重要な取り決めなのである。27もある加盟国が集まって一々基本的な議論を繰り返さなくてもよくするために、とかくEUはこの種の枠組み協定を結びたがる傾向があるのだ。

将来に向けて 
日EU間の協力は多岐に渡っているが、現在までの実績として一つ挙げられるのは共通安全保障・防衛政策(Common Security and Defense Policy; CFDP)ミッションである。
例えば、アフガンなど中央アジアでの国境管理強化プロジェクトが挙げられよう。EUは既にバルカン半島やアフリカ、あるいはアフガニスタン等で広く活動しているが、今後日本は文官ミッションでの協力を行っていく可能性がある。
他方で、経済の分野に目を向けた場合、両者の協力が順調に進んでいるとは残念ながら言えない。EPA(経済連携協定)の交渉において、一方で日本は自動車や電気製品に対する関税の引き下げを求めている。他方、EUは日本の商慣行などいわゆる非関税障壁(特に医療品・医薬機器、政府調達等の分野)に主な関心がある。このように、日本とEUの立場には依然隔たりがあるが、今後も根気強く対話と協議を続けていくことが肝要だろう。

100709mrKuriyama_flyer.JPG
文責:早稲田大学大学院
政治学研究科
吉沢 晃